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消化器の病気について

食道がん

日本でも高齢化に伴って食道がんにかかる人の割合が増えています。男性は2009年にはがんでの死亡率の第7位になっています。早期がんでは症状はほとんどありませんが、進行すると食事がつまる感じがし、飲み込み難くなります。診断は内視鏡検査で行われます。最近では画像を通常光から特殊光に切り替えることによって早期がんの発見も行えるようになってきました。当院の内視鏡検査でも行っています。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は胃の中のものが、食道に逆流することによっておこります。主な症状は胸焼けと呑酸(逆流感)です。口の中の苦みや咳などの症状を起こすこともあります。診断は症状と胃内視鏡検査(胃カメラ)です。診断されれば多くの場合飲み薬と生活習慣指導で治すことができます。現在、食道炎に罹っている人は10~15%と言われています。

胃がん

最近胃がんの死亡率は減少傾向にありますが、それでもがん死亡率の男性の2位、女性の3位に位置しています。診断はバリウム検査でも内視鏡検査でも可能ですが、詳しい観察や細胞の検査には内視鏡検査が必要です。早期に診断されれば、お腹を切ることなく内視鏡手術で治療することもできます。また、そうでなくても腹腔鏡を用いた傷の小さな手術を行うことも可能です。

胃十二指腸潰瘍(ピロリ菌感染)

潰瘍は症状としては腹痛、吐き気、胃のもたれ感、食欲がないなどとして現れることが多いです。診断は胃内視鏡検査でおこないます。胃癌に潰瘍ができることもままあり、これは生検という細胞の検査をすることによって判定されます。
また潰瘍の原因としてピロリ菌の胃粘膜への感染が知られています。ピロリ菌は幼少時に感染し、長期にわたって胃の中に住み着きます。これが慢性胃炎の原因となり、さらに委縮性胃炎を引き起こします。
この胃炎になりますと、2~3%の人に潰瘍ができ、さらには0.4%の人に胃癌を発生させるといわれています。

機能性ディスペプシア

胃の痛みやもたれ感などの強い症状があるにもかかわらず、内視鏡検査をおこなっても潰瘍や癌などの病気が見れらないことがあります。このような病気は機能性ディスペプシアとよばれ、最近増えてきています。一般的には日本人の10~20%にみられ、かつ女性に多いと報告されています。治療は薬の内服で行われますが、すべての機能性ディスペプシアに効く薬はないとも言われています。日々の外来診療で個々の患者さんにあった薬を処方していきます。

大腸がん

近年日本の大腸がんは死亡率も罹患率(かかる人の割合)も著しく増加しています。全がん患者の死亡数でも、男性は3位、女性は1位となっています。その症状は下血、腹痛、便秘ですが、進行すると腸閉塞や腹膜炎にもなります。そして比較的早期の大腸がんではほとんど無症状です。また家族性に発生することも多く、家族に大腸がんにかかった人がいる場合はそうでない人よりも大腸がんになる危険性が高いと言われています。症状があればもちろん、無くても定期的に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行うことによりその発見を早くすることは可能です。ごく早期のがんであれば、お腹を切ることなく内視鏡で切除することも可能です。

大腸ポリープ

大腸にできる進行がん以外の隆起性病変を示します。症状としては便潜血陽性や軽度の腹部症状で、これらをきっかけに大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をおこなった結果発見されます。治療は1㎝程度のものならば、大腸内視鏡検査の時にポリープ切除をおこないます。それ以上のものや癌が疑われるものは後日切除する場合もあります。切除したポリープは顕微鏡の検査(病理検査)で良悪性を診断しますが、最近では内視鏡で色素内視鏡や拡大内視鏡検査などをおこなって切除が必要かどうかを判断できる場合もあります。当院の内視鏡検査でもこれをおこなっています。

過敏性腸症候群

慢性的に腹痛を伴う下痢や便秘などの便通異常が特徴です。排便があると症状がよくなるのも特徴です。精神的なストレスで症状が悪化すると言われています。日本では消化器内科を受診する人のおよそ30%がこの病気に相当するくらい数多い疾患です。便通異常のタイプは男性は半数が下痢、女性は9割が便秘です。治療は内視鏡検査などで他の病気がないことを確認し、生活習慣の改善や薬による治療、時には心療内科での治療も必要になります。

肝がん(肝細胞がん)

日本の肝がん年間死亡者数は約3万人で、がんの部位別死亡率では男性は4位、女性は5位です。その数は男性が女性の約3倍です。肝がんのほとんどがウイルス性慢性肝炎などの慢性肝疾患から生じています。特にB型肝硬変、C型肝硬変は極めて高率に肝がんを発生します。このような慢性肝疾患の方は腹部超音波検査や腹部造影CTなどの画像検査を定期的におこなっていく必要があります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎の問題点は、一時の感染だけでなく、持続的に感染することです。そして慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんへと続いて行きます。持続的に感染をするウイルスはB型とC型です。症状は進行して肝硬変になると様々ですが、慢性肝炎の状態では自覚症状はあまりありません。特にC型は血液検査をしないとわからないことが多いです。治療は薬による抗ウイルス治療です。どの薬を使うか、インターフェロンを使うかなどの選択は複雑で難しいです。当院で診断された場合は、速やかに肝臓専門医をご紹介します。

アルコール性肝障害

日本では全肝疾患に占めるアルコール性の比率は近年増加しています。アルコールのの飲み過ぎにより初めにおこる病気は脂肪肝です。これは2~4週間の断酒で改善します。しかし、アルコールの多飲を繰り返すと肝炎を発症します。血液検査で肝障害があらわれ、黄疸、発熱、下痢などもおこります。ここまで来ると断酒しても改善しない人もいます。さらに大量飲酒を続けると肝硬変に至り、肝臓がんが発生する場合もあります。現在では肝臓がん(肝細胞癌)の約7~13%がアルコール性です。

胆石症

毎年約50万人の新規症例が発見されます。良性疾患ですが、突然の腹痛発作や稀には敗血症の原因になることもあります。しかし、約8割は無症状で経過し、健康診断の時の超音波検査で偶然発見されることが多いです。無症状の胆石に関しては基本的には経過観察ですが、石とがんの関係は完全に否定されていないので、年に1回の超音波検査は必要です。症状が繰り返されるような場合は治療の適応です。結石を溶かす治療(溶解療法)や体外衝撃波などもありますが、石の種類や再発の問題もあります。手術は石ごと胆嚢を切除しますが、今は腹腔鏡の手術で傷も小さく入院期間も短くできます。

胆道がん(胆嚢がん、胆管がん、乳頭部がん)

多くの臓器のがんでは、男性が女性より死亡率が高いですが、胆嚢がんと胆管がんは、女性の方が死亡率が高いです。症状は胆嚢がんでは右季肋部痛が最も多く、次いで悪心、嘔吐、体重減少、黄疸などです。しかし、健診などの超音波検査で無症状で発見されることもあります。胆管がんのほとんどは黄疸で発症します。
胆嚢がんに胆石が合併することは比較的多く見られますが、胆石を持つ人がが胆嚢がんになりやすいかどうかはわかっていません。

胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープは人間ドックでは約10%の人に見られます。そのほとんどは無症状です。診断は腹部エコーが一番です。大きさが10㎜以上のポリープはがんの可能性があるのでさらに詳しい検査が必要です。がんが疑われる場合や、あるいは否定できない場合は胆嚢摘出術という手術が必要です。

慢性膵炎

慢性膵炎の発症は飲酒と強い関連があり、患者全体の65%がアルコール性です。慢性的に進む膵臓の炎症で、膵石という石が見られることが多いです。また糖尿病を合併することも多く見られます。気をつけなければいけないのは同じような症状に膵臓がんがあることです。超音波検査やCTなどの画像検査をおこなって膵臓がんでないことを確認します。治療は薬物療法がおもですが、アルコール性の場合は禁酒が必要です。ある程度以上進行すると栄養障害や糖尿病もおこってきて、それらの治療が必要になります。

膵がん

膵がんはきわめて難治性であり、その患者数は年々増加の傾向があります。長期生存には早期発見が最も重要ですが、現在のところほとんどが進行がんの状態で見つかっており、早期発見が難しい状態です。
症状は腹痛、全身倦怠感、食思不振、体重減少がありますが、黄疸で見つかることもあります。しかし、症状が出た時にはすでに手術不可能な状態であることも少なくありません。
診断には超音波検査やCTなどの画像診断が必要です。がんが疑われる時には内視鏡検査やPETなどさらに検査をすすめることが必要です。糖尿病を合併することも多く、糖尿病患者さんは定期的な超音波検査をお勧めします。

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